支柱をSiC棚板の中心に置くとSiC棚板が割れます

棚板は3本の支柱で支えるのが一番安定し良いとされています。2013Dec支柱組み方1blog

 

一方、焼成製品の重さによってSiC棚板が割れたり曲がったりしないようにと、棚板の真ん中にも支柱を置こうとする方が時折いらっしゃいますが、この棚組方法は非常に危険で逆にSiC棚板の割れを引き起こしてしまう可能性が非常に高いです。2013Dec支柱組み方2blog

 

炉内で温度が下がる過程で、熱伝導率の良い板形状のSiC棚板は端の方から比較的早く温度が下がってゆきつつも、棚板中心部分は冷め難い為、最後まで温度が高い状態にあります。一方、支柱はアルミナ・ムライト質でSiCよりも熱伝導率は10倍悪いとも言われており、且つムク形状の為、支柱の方はなかなか温度が下がりません。2013Dec支柱組み方1裏最終

となると下のイメージ写真の通り、蓄熱された支柱がSiC棚板中心部分に接触していると支柱から棚板中心部分へ熱を与え続ける事となり、その結果、ただでさえ元々温度が高い棚板中心部分が更に熱くなってしまいます。2013Dec支柱組み方2裏最終最終

 

SiC棚板含め耐火物が割れる一番大きな原因は温度差=ヒートショック(熱衝撃)ですので、良かれと思って置いた中心の支柱が、逆にSiC棚板に熱的ショックを与える事となり、結果棚板の割れを引き起こしてしまいます。

耐火物の使用にあったっては、1つの物に関してできるだけ温度差が付かない様な設置方法・使用方法が重要になります。

大型SiCスリーブ

大型スリーブ形状SiC耐火物のご紹介です。
2013Nov SiCスリーブ445-425x380mma

2013Nov SiCスリーブ445-425x380mmb

サイズは 外径φ445mm x 長さ380mm  肉厚10mm です。材質は酸化物結合SiCで、鋳込み成形品ではなくプレス成形品のSiC耐火物です。

Si-SiC(反応焼結SiC)とは違い緻密質ではありませんが、最高使用温度は1,500℃で単価も同じSiC耐火物類の中では最も安価な物となります。

耐火物お問い合わせの際のポイント

耐火物は使用条件に合った物を適切な方法で使用しないと、その性能を発揮できなかったり、製品に悪影響を及ぼしたり、場合によっては割れ・曲がり・反応等々で窯内事故につながる危険もございます。またやみくもに高価なハイスペックな物を使用してももったいない事になってしまいます。各種板

SiC系耐火物の種類でも、酸化物結合SiC、反応焼結SiC(Si-SiC)、窒化物結合SiC(N-SiC)、再結晶SiC(Re-SiC)、等種類があり、白物系耐火物でもコーディライト系からムライト系、アルミナ系等々様々な種類がございます。我々(株)大幸セラミックは耐火物のプロフェッショナルとして最適な材質、最適な形状や厚さ、最適な使用方法等を提案・アドバイス・確認する事が最も重要な仕事と考えております。

最適な耐火物をご提供するためには、まずは使用条件を確認させて頂く事が不可欠ですので、お問い合わせの際には是非下記ポイントもご連絡ください。

  1. 最高使用温度(焼成温度):耐火物の大まかな材質を選定します。
  2. 焼成の時間(炉に入ってから出てくるまでの時間):熱衝撃(ヒートショック)の度合いを確認します。
  3. 炉の種類、耐火物の組み方や使用方法、焼成物の重量や載せ方: 材質選定や形状・厚み等を選定します。
  4. 焼成物の詳細:耐火物に対しての反応性や、耐火物に要求されるポイントを確認します。

また使用条件以外に必要な情報として、現状の必要数量、テストの場合うまくいった後の将来的な必要数量を是非ご連絡ください。数量によって製造の可否や対応方法が変わってきます。

その他に「現状問題があって改善したい」「耐火物を使ってもっとこういうことをしたい」等々、お問い合わせ頂いたバックグラウンドもお聞かせ頂ければ、何か良いヒントになるかもしれません。

最適な耐火物を絞込み、確度の高いご提案・お見積もりをさせて頂く為に、情報提供ご協力頂ければ幸いでございます。

SiCセッター/棚板コーティングの違い

SiCセッター/棚板のコーティングの役割は前回の記事で書かせて頂きましたが、今回はそのコーティングについての補足です。当社SiCセッター/棚板のコーティングには1回目の焼成まで取れないようにする有機バインダーと、焼成後にセッター/棚板に焼き付ける無機バインダーが配合されています。しかしながら他社品には有機バインダーが入っていないような状態の物もあります。

下の写真は某K社販売のSiC棚板ですが、新品の状態で白いコーティングは直ぐに粉々に取れてしまい、運んでいる間にどんどんコーティングが取れて、いざ使おうという時には既にいくらかコーティングが薄くなってしまっています。

他社SiC棚板コーティング
他社SiC棚板新品コーティング脱落

これではちょっと何かに強く当たった部分は簡単にえぐれてしまいます。又、下の写真の通り新品の状態でコーティング面に丸く盛り上がった点が点在してしまっています。

他社SiC棚板コーティング表面状態
他社SiC棚板コーティング表面状態

これを焼成すると中の無機バインダーによって焼成後はこのコーティングの盛り上がりのまま固まってしまい、せっかくの新しい棚板表面も凸凹状態になってしまいます。

この様に同じコーティングでも各社違いがあり、SiC耐火物とコーティング材料の熱膨張率が異なる事から焼成時にコーティングが剥離してしまう危険があったり、それを避けるために焼成後でもかなり粉っぽい配合にすると焼成を重ねる毎にどんどんコーティングが飛んですぐに薄くなってしまったりと、意外にコーティングのノウハウも難しい部分が色々あります。当社はコーティングの材料選定から配合・塗布まで、ベストな状態のコーティングでSiCセッター/棚板をご提供致します。

SiCセッター/棚板のコーティング

(酸化物結合)SiCセッター/棚板表面には、通常片面にコーティングがされております。300x300x10t

これは上に載せる焼成物とSiCセッターが引っ付かないようにする役割を果たします。焼成雰囲気にもよりますが、焼成に使用すると通常SiCセッター表面には少しシリカ(SiO2)が生成され、高温ではネバネバした状態の物ですが冷えるとガラスのように固まり、焼成物がセッターに引っ付いてしまいます。また焼成物の方からも素地(きじ)や釉薬から耐火度の低い成分が溶け出してセッターに付着すると冷めた時に固まり同じくセッターに引っ付きます。

このコーティングは新品の状態ですと有機バインダーで軽く粉状の物が引っ付いているだけですので、硬い物で強くこすったり、水に濡れると剥がれて取れてしまいます

コーティングは1,100℃以上の温度で焼成されて初めて中の無機バインダーが適度に溶けセッターに焼き付く仕組みになっていますので、1,100℃未満(例えば700℃等)で初回焼いてしまうと中の有機バインダーだけ飛んでなくなってしまい、無機バインダーは溶け出さない為、炉から出すとコーティング表面は粉っぽく非常に取れやすい状態になってしまっています。尚その場合、その後そのまま1,100℃以上で再度焼成すればセッターに焼き付きます。

因みに一度1,100℃以上の焼成で焼きついたコーティングはしっかりセッターに固着していますので、その後は低い温度で焼成してもコーティングは取れやすくなったりはしません。

コーティングは離型剤のような役割ですので、固まりすぎてもその役割を果たさず、固まらなさ過ぎても直ぐにコーティングが飛んでなくなってしまうという事になりますので、焼成後は指でこすってかすかに粉っぽいような状態が離型剤の役割を果たしつつ長持ちするコーティングという事になります。

SiC耐火物の酸化による膨張と劣化

SiC耐火物の酸化による変化が如実に現れた例です。
左は当社の新品酸化物結合SiCで右は他社の使用後酸化物結合SiCです。
SiC酸化比較1
左:当社新品SiC     右:他社使用後SiC

右の物も元は左の物と同じような濃いグレー色をしており、サイズも左と同じサイズでしたが、炉の中で焼成を繰り返される事によりSiC+O2=SiO2+CというSiCの酸化反応によってSiCがSiO2(シリカ)に変化し、色が白っぽくなりサイズも膨張してしまいました。

SiC酸化比較2
左:当社新品SiC     右:他社使用後SiC

ここまで変化してしまうと、この2つが元は同じ外観をしていたなどとは全く想像できないかと思います。

右側の酸化されてしまったSiC耐火物の断面が下の写真です。

酸化された他社SiC耐火物の断面
酸化された他社SiC耐火物の断面

表面に近い方が色が白っぽくなっているのが判るかと思いますが、これは表面に近い方が酸化された度合いが強い為です。これくらいまでにSiCが酸化され膨張し劣化してしまうと、もはや耐火物としての役割・強度は無く、表面をこすればボロボロ白い粉が落ち、手でも端の方が折れるくらいです。

以前のブログ記事SiC耐火物の膨張と劣化でも書かせて頂きましたが、SiC耐火物の性能の良し悪しは「いかに酸化され難い性能をもっているか」という点で決まってくると言っても過言ではなく、当社販売酸化物結合SiCは、その原料選定から各製造工程におけるノウハウにより、耐酸化性能に優れた高品質SiC耐火物となっております。

肉厚SiC耐火物

酸化物結合SiCですと、プレス成形でかなり肉厚な耐火物も製造可能です。穴開495x495x115t写真の物はサイズ495 x 495 x 厚さ115mm、貫通穴付き形状です。従来は鋳込み成形でないと作れなかった様な物も、プレス成形で作る事ができれば強度や耐久性の向上が図れます。

SiC製簡易サヤ(匣鉢)システム

酸化物結合SiC棚板を利用した簡易サヤ(匣鉢)システムのご紹介です。
壁&キャップb

上の写真はSiC棚板500 x 500 x 12mm の上に、高さ80mmの壁4枚をキャップによって支持した物です。

壁の端部に上下から筒状のキャップをはめ込んで壁を支える仕組みです(壁もキャップも同じくSiC製です)。

壁&キャップa

アルミナ・ムライト・コーディライト質で500角くらいの大きなサヤ(匣鉢)を作るとなると底厚は非常に分厚くなり、且つそれでも寸法が大きいが故に底下がりが起きたり、角部等の割れも発生しやすいと思います。

一方、SiC製部材を組み合わせるこのシステムですと、重量も軽くでき、反りや割れに対する耐久性もあります。

このSiC製壁やキャップは受注生産品となります。

反応焼結SiC(Si-SiC)の形状・サイズの制限

SiC耐火物の中でも強度があり、熱伝導率も良い反応焼結SiCですが、製造方法や緻密質という特徴から形状やサイズに制限があります。

反応焼結SiC(Si-SiC)
反応焼結SiC(Si-SiC)

反応焼結SiC(Si-SiC)は、気孔のあるポーラスなSiCの成形体に金属シリコン(Si)を含浸させて緻密体を作る事により、高強度・高熱伝導率・高耐酸化性能を有する耐火物になりますが、その肉厚に差があると金属シリコンを含浸させる際に含浸具合が不均一になり、薄い部分に合わせると厚い部分が”含浸不足”になり、厚い部分に合わせると薄い部分が”焼けすぎ”になり反りが発生したりしますので、基本的には均一な厚みの形状しか製造できません。

また肉厚が12mm(小さな物だと15mm)より厚いと含浸し切れないので、厚みは12mm以下(もしくは15mm以下)である必要があり、また他の耐火物でも同じですが、薄すぎても製造し難くなりますので、サイズにもよりますが一番薄くて5mmくらいの肉厚となります。

また緻密体であるが故に、製造工程で反りや割れが発生せずに作れるサイズも(要求される反り公差にもよりますが)約500x400mm くらいまでが限界です。