SiCの劣化と強度

下の写真は他社製のSiCキャップです。

他社SiCキャップ劣化1

SiCキャップはストラクチャーパイプの上にはめ込み、上からの荷重を支える窯道具ですが、その荷重の影響か(強いはずである)SiCキャップにひびが入ってしまっています。

他社SiCキャップ劣化2

上の濃いグレー色の物が弊社SiC横渡しビームで、その下が他社のSiCキャップです。

キャップは全体的に白っぽく薄いグレー色になっている事から、SiCが酸化され劣化していることが見て取れます。新品時の元々の強度の違いもあるかもしれませんが、SiCが酸化され劣化する事により機械的強度も確実に落ちますので、やはり耐酸化性能はSiC耐火物にとって最も重要な性能の一つです。

SiCコンバスター

ハイスピードガスバーナー用のSiCコンバスターの紹介です。

2014 9 blog1

写真の物は再結晶SiC (Re-SiC)製です:全長208mm。

2014 9 blog2

再結晶SiC (Re-SiC)は最高使用温度が1,600℃と高温条件下でも使用可能です。

反応焼結SiC (Si-SiC)製コンバスターは緻密質で酸化消耗も非常に少なく良いのですが、使用温度が1,350℃を超えると含浸させた金属シリコンが溶け出してきてしまいますので、その場合はこの再結晶SiC製コンバスターが必要になります。

バーナー部は熱電対で測定している炉内の雰囲気温度よりも高温になりますので材質選定には注意が必要です。

精密鋳造用ジルコニアるつぼ

ニッケル基超合金精密鋳造専用のジルコニアるつぼの紹介です。

ジルコニアるつぼφ150x250H a

航空機エンジン・ガスタービン用ニッケル基超合金の精密鋳造にはこの金属との反応性の点から、マグネシア安定化(MgOスタビライザーの)ジルコニアるつぼの使用が不可欠です。

これら精密鋳造でネックになるのが、るつぼに付着した前ショットの残留金属や、るつぼ母材自体のコンタミ(異物混入)であり、溶融金属のるつぼへの浸透や溶融金属によるるつぼのエロージョン(腐食)が原因です。

当社販売のジルコニアるつぼは(プレス成形品と違い)鋳込み成形品であるが故に、るつぼ表面が非常に滑らかできめ細かく、溶融金属との濡れ性が悪いおかげで溶融金属のるつぼへの付着や、るつぼのエロージョン(腐食)が起こり難く、即ち最も嫌われるコンタミの発生を抑えられます。

ジルコニアるつぼφ150x250H b

ジルコニアるつぼφ150x250H c

あるケースでは海外製某Z社のプレス成形品ジルコニアるつぼよりも約2倍ショット数が伸びたという例もございます。

水分によるアルミナコーティングの剥がれ

SiC棚板に通常施されているアルミナコーティングは、新品時は有機バインダーで板に軽く引っ付いているだけで、約1,100℃以上に焼成されて初めて板にしっかり焼付くような配合になっております。

ですので1回目の焼成では特にそうですが、焼成時に水分が焼成物と棚板との間にこもってしまうような状態ですと、アルミナコーティングが棚板に焼付く前に水蒸気によってコーティングがふやけて浮き、剥がれてしまう場合があります。

アルミナコーティング水分めくれ2

このSiC棚板は、食器の焼成で食器底部分のハマ(高台)の内側に乾燥しきっていない釉薬の水分が閉じ込められ水蒸気となりコーティングが浮いて剥がれてしまった例です。

アルミナコーティング水分めくれ1

焼成時には製品が十分乾燥しきっているのを確認しないと、このようにコーティングに悪影響を及ぼす場合があり、特にSiC棚板1回目の焼成時には顕著に影響が現れますが、2回目以降の焼成でも、こもった水分によりアルミナコーティングが剥がれる場合はありますので注意が必要です。

反応焼結SiC(Si-SiC)の強度

反応焼結SiC(Si-SiC)ビームは常温曲げ強度・高温曲げ強度共に250Mpaと台車の構造材としては非常に丈夫な耐火物です。

しかしこの反応焼結SiCビームでもハンドリングの時にちょっと硬いものにぶつけたり、低い位置からでも落としてしまうと下の写真の様に簡単に折れてしまいます。2014 6 SiSiCberam 折れ

高強度な耐火物であっても、耐火物はセラミックス製品であり、金属とは違い衝撃に対しては弱いです。2014 6 SiSiCberam 折れUP

ですので、全長が長い割に細いものや、サイズが大きい割に薄すぎる板などは、炉内での使用上は問題ないとしても、納入までや納入後・操業時のハンドリングを考えた時、非常に割れやすい為お勧めできないという場合もございます。

アルミナ・ムライト質耐火物の熱間荷重による収縮

下の写真は使用された、アルミナ約60~70%のアルミナ・ムライト質 L型支柱です。

L型支柱サイズばらつき

元は同じ高さのL型支柱でしたが、荷重のたくさんかかる箇所で多く使われた物と、そうでない物・新し目の物とはこれだけ高さに差が出てしまっています。

アルミナ・ムライト質の白物耐火物は熱間荷重により少しづつ収縮されてゆきます。「高温で荷重がかかると物がつぶれてゆく」という比較的イメージしやすい現象かと思います。

ちなみにSiC耐火物の場合は「最高使用温度まで機械的強度は落ちない」という特性と、「焼成雰囲気中でSiCが酸化されることによってSiO2が生成され少しずつ膨張してゆく」という性質から、逆に使われれば使われるほど膨張し寸法は大きくなります。

プレス成型SiCサヤ(匣鉢)

プレスSiCさや

プレス成型品である酸化物結合SiCで作った外径330mmのサヤ(匣鉢)です。成型方法がプレス成型ですのであまり立ちの高いものはできませんが、写真のような形状は製作可能です。尚、内側の白色部分はアルミナ系コーティングが施された状態です。

SiC棚板3段積みローラーハース

ローラーハースインドネシア6Hrs 1280℃

SiC棚板を使用しローラーハースで3段積み焼成しているケースです。

炉のIn/Out時間は約6時間、最高温度は1,280℃。

通常のシャトル炉やトンネル炉と比べ、急熱・急冷の焼成条件であるローラーハースはヒートショックが厳しく一般的には棚板が割れやすい条件ですが、SiC棚板が使えるケースもあります。

SiCプレートの穴加工について

SiC耐火物は非常に硬い材質の為、焼成後の後加工は結構難しく、特に穴加工の場合はダイアモンドのドリルで加工することになりますが、ドリルが摩耗してゆくと開けられる穴の直径がだんだんと小さくなり、特に穴直径の寸法公差が厳しい場合ですと、すぐにドリルを交換しなくてはならなくなり高価なものとなってしまいます。

しかしながら、プレス成型品である酸化物結合SiCの場合、直径φ8mm以上の穴ですと金型から穴を作ることができ、加工無しで穴付きのSiCプレート等ができます。

穴付き酸化物結合SiCプレート

この場合、金型で寸法が決まってきますので、穴の大きさも変わる事無く量産でき、最初に金型代はかかりますが製品単価自体は後加工品よりも安く抑えられます。

ただし金型から作る場合はある程度のまとまった数量が必要となりますのでご相談ください。

コージライト質スペーサー・ムライト質スペーサー

コージライト質とムライト質のスペーサーのご紹介です。

上:コージライト質    下:ムライト質
上:コージライト質φ69xL40mm      下:ムライト質φ62xL60mm

上の茶色い方がコージライト(Cordierite)質で、下の白い方がムライト(Mullite)質です。

ヒーターの位置決め・絶縁用のスペーサー等に使用されます。ムライト質の特徴は低膨張率でヒートショックに強く、ムライト質の特徴は耐火度がコージライト質よりも高い点です。それぞれの材質の原料配合、使い方や使用目的等により異なりますが、例えば一般的なコージライト質耐火物は約1200℃以下、ムライト質耐火物は約1300℃まで使えます(アルミナ配合を90%くらいまで上げればMax. 1750℃)。