焼成されて炉から出てきたばかりの瓦です。近づくとかなりの熱を感じます。約100mの長さのトンネル炉を10時間以上かけて台車が通り瓦は焼成されます。一つの台車はちょっとした小部屋くらいもの大きさがあります。
焼成時炉内の製品赤熱状態
下の写真は1,200℃弱で焼成されている瓦の炉内での状態を撮った写真です。
約100mトンネル炉の焼成帯部分のぞき口からの写真で、中の瓦製品が赤熱しているのが見てとれます。この温度では台車上の耐火物も赤熱状態です。
焼成前の瓦
屋根の瓦も焼き物・セラミックスです。水分約20%くらいの原料粘土を巨大な土練機でトコロテンの様に押し出して長い形状に成型し、それを切断してプレスすると瓦の形になります。下の写真はプレス成型直後の瓦です。
手である程度の力を加えると変形します。この後、乾燥・焼成の工程になります。
SiCセッターの高温焼成によるラミネーション
下の写真は1,560℃焼成で使用されたSiCセッターで、セッターの一部が膨れ上がった為、膨れた箇所を切断した写真です。
数百枚使用されたSiCセッターのうち1枚にこの様なラミネーションが発生しました。原因はSiCセッター製造工程で内部に閉じ込められた空気です。このセッターの厚みは15mmで比較的厚めの板となり、厚いが故にプレス成型時に内部に空気が閉じ込められやすく、それでも一般的な1,200~1,350℃くらいの焼成温度では影響ないのですが、1,560℃等の高温焼成ですと、この様に閉じ込められた空気が急激に膨張し、セッター自体も膨れ上がるというケースが稀にあります。
因みにカタログ上、最高使用温度1,500℃となっておりますSiC(品番:FR-90)セッター/棚板ですが、実際は焼成条件等にもよりますが、1,500℃以上でも問題なく使えたりします。
ムライト板のくり抜き加工
ムライト質の板をウォータージェット加工してくり抜いたものです。
ウォータージェット加工は費用は高いですが、焼成後の板を加工しますので、曲線でも切断面がきれいかつ正確に加工できます。
ムライト板の場合は、焼成前の生の状態で穴開けポンスを使ってくり抜き加工したり、切取り加工したりもできますが、加工面はもっとぼそぼそで粗くなります(費用はこの生加工の方が安いです)。
尚、SiC板の場合は原料に粒度の粗い物も入っている為生の状態での加工はできず、焼成後は非常に硬いのでこのムライト板の様な大きな穴開け加工はできません。
SiC耐火物焼成炉
SiC棚板やセッター、ビーム、パイプ、レンガ等のSiC耐火物も焼成して製造する言わばセラミックスです。焼成炉はバッチ式のシャトル炉です。
耐火物を焼成しますので、高温且つ長く焼成します。
SiC棚板の鉄分と色
前々回のブログ「SiC原料と鉄分」の通り、グレードの落ちるSiC原料の場合は鉄分が多く含まれたりします。鉄分は耐火物の新品時には赤茶色に見えなくても、一度焼成で使用すると赤茶色に出てきたりします。
下の写真は2~3回焼成に使用した後の他社製のSiC棚板(SiCプレート)です。
側面に赤茶色の酸化鉄が出てきております。
この種の酸化物結合SiC耐火物においては、ある程度鉄分が含まれるのは普通で性能には影響ないのですが、鉄分があまりに多いと、下の写真の様にコーティング面を突き破って表面に赤茶色の鉄分が析出してしまい、それが上にのせたセラミックス製品に色移りしたり、SiC棚板底面から鉄分が析出して落下した場合は、下の段の製品に色移りしたりと不具合が発生します。
尚、ユーザーの炉で使用後に初めて赤茶色に出る理由は、酸化鉄でもFeO, Fe3O4の状態では色は黒色で、焼成雰囲気によって酸化鉄の組成がFe2O3になると色が茶色になる事に由来します。
穴付きSiCプレート
サイズ400 x 150 x 20mm 穴付きの酸化物結合SiCプレートです。
SiCの穴あけ加工はダイヤモンドドリルを使用する為に非常に高価となり、現実的ではありません。当社販売の酸化物結合SiCプレートは全てプレス成形品で、金型からこの形状を成型します。
尚、金型作製からとなりますので、製作時にはある程度まとまった数でのご注文が必要となります。
SiC原料と鉄分
下の写真はテスト的に取り寄せた今とは別のSiC原料サンプルを棚板の上に載せ、炉の中で焼成し取り出した物です。
SiC原料中の鉄分によって棚板が茶色く変色しているのが判るかと思います。
SiC原料は精製された後に粉砕・整粒されるのですが、その工程がしっかりとした設備と管理の元行われないと、鉄分が多く含まれた粗悪な原料となってしまいます。
このような原料を使用すると出来上がったSiC耐火物にもそのまま多量の鉄分が含まれる事となり、その耐火物でセラミック製品を焼成すると製品に茶色く色移りするなどの問題となります。
尚、我々使用のSiC原料ではこのような茶色にはならず、また更に耐火物製造工程の最初で脱鉄の工程もあり鉄分が多く含まれない様になっております。
SiC耐火物の品質・性能が決まるのには、耐火物製造の各工程で重要ポイントはありますが、出発点であるSiC原料の品質は一番重要であると言っても過言ではありません。
Si-SiC(反応焼結SiC)ビームの劣化と破損
十数年間使用されたSi-SiCビームの1本が折れました。
外側もそうですが、内側表面にも白くSiO2(シリカ)が生成されています。
使用されて行くうちに少しずつですが含浸されていたSiが析出して酸化されSiO2になったり、SiC自体も酸化されSiO2になったりします。
そうなると強度も本来の物よりも少しずつ弱くなり、あるところまで行くと折れたりします。
寿命は、焼成条件(最高温度・雰囲気・ヒートカーブ)やかかる荷重によって異なりますが、Si-SiC(反応焼結SiC)の場合は約2,500~3,000サイクルと言われております。ちなみにこのビームの場合は約4,000サイクル弱使用されました。