SiC棚板のSiC含有%比較

酸化物結合SiC耐火物の性能比較の一つの指標はSiC含有%です。

下は他社販売のSiC棚板です。K company SiC sample一部分を切り取り粉砕し分析にかけたところ、SiC%は88.2% でした。SiC content K company一方、以前弊社のSiCセッターを同じ機関で分析した結果は90.4%でした。SiC content Daikoこの%差の原因は元原料の品質(SiC%)の差である可能性があります。以前のブログ記事「酸化によるSiC%の減少」でもご説明した通り、劣化してゆくとSiC%が減ってゆき、棚板として大体使わなくなるくらいに劣化したSiC棚板のSiC%は85.4%でした。

いかに良質のSiC原料を安定的に使用しているかが高性能/長寿命の最初のポイントです。

 

再結晶SiCの焼成雰囲気と使用可能温度

再結晶SiCの大気雰囲気での最高使用温度は1,650℃ですが、酸素の無い雰囲気焼成ではそれ以上の温度でも使用可能です。

SiC99%の再結晶SiCが1,650℃を超えてくると使えない理由はその温度以上ではSiCと酸素が反応してしまいシリカの泡が生成されてしまうからです。一方、無酸素雰囲気での焼成ですとその反応は起きず、2000℃近くで使われている例もあります。

下の写真は無酸素雰囲気焼成で使用されている、再結晶SiCの外径φ450 x 内径φ405 x 高さ200mm の枠です。ReSiC muffle

肉厚は22.5mmあり1個当たりの重量は16.3kg です(カサ比重=2.7)。再結晶SiCですと肉厚で比較的大きな製品も対応可能です。

Si-SiC耐火物の熱伝導率

Si-SiC保護管
Si-SiC保護管

熱伝導率とはどれだけ熱が移動しやすいかを表す数値で、数字が大きいほど熱が移動しやすいという意味です。その単位はW/m・K(ワット パー メートル ケルビン)が一般的であり、 1mの物体を介して1ケルビン温度差=1℃の温度差がある場合にその1mの厚さをどれだけの熱エネルギー量(W)が移動するかという意味です。尚、温度によって熱伝導率は変化しますが、温度が上がるにしたがって熱電度率が下がる物・上がる物・ほとんど変わらない物があります。

下の表はSi-SiC(反応焼結SiC)・焼結体アルミナ・ステンレスSUS304の各温度での熱伝導率の比較です。

Heat conductivity table

温度による熱伝導率の変化の仕方は異なりますが、焼結体アルミナ・ステンレスよりもSi-SiCの方が熱伝導率が良いという事ははっきり判ります。実際に炉内で使われるムライト・レンガ質の耐火物等ですと更に焼結体アルミナの1/4~1/10程度しかなかったりしますので、Si-SiC耐火物の熱伝導率はかなり高い事が見て取れます。

SiC炉床板

プッシャー炉のSiC炉床板(レール)です。SiC(炭化ケイ素)は耐摩耗性が高く、上を台板が押されて滑ってゆくこの炉床板にはSiCが適しております。

SiC pussher kiln hearth

SiCの種類としては、酸化物結合(シリカ結合)SiCで、基本的には通常のSiC棚板等と同じですが、炉床板の場合は炉の中に設置され続ける為、SiCが一番酸化されやすい約700~1000℃の温度帯で長時間炉に入っていても酸化されにく、また高温での耐摩耗性にも優れた特別な配合になっております。

酸化によるSiC棚板のSiC(炭化ケイ素)%減少

SiC棚板等のSiC耐火物は大気雰囲気で焼成されると徐々に酸化されて行き、反りや膨張が発生し本来の強度も落ちてゆきます。SiC(炭化ケイ素)が酸化されるとSiO2(シリカ)が生成されSiCの%は減ってゆきますが、酸化の程度の違いによって実際にどのくらいSiC%が減っているのかを分析しました。

下の写真のSiC棚板はかなり使用され裏面にシリカも多く出ており棚板として使うにはほぼ限界に近い程度の物です*ここではSiC棚板(反り中)とします。warped SiC

下の写真は本来は棚板ですが、煙道カバーとしてカートップに設置され続け、結果激しく酸化してしまい、これ以上酸化された状態のSiCはめったに見られないというくらいの程度の物です*ここではSiC棚板(反り大)とします。heavily warped SiC(反り大)は近くで見ると判る通り、SiC本来の光沢も消えガサガサした感じです。
heavily warped SiC UP

この2つのSiC棚板を分析用に細かく砕いたのが下です。Grinded 2 samples SiC comparison

色合いと光沢具合の違いが良くわかるかと思います。

それぞれのSiC%をセラミックス試験場で分析した結果が下です。SiC % analysis results

SiC棚板の新品はSiC=約90%ですので、棚板として寿命の限界程度に酸化した物(反り中)がSiC=85.4%、それ以上に極端に酸化された物がSiC=81.7%という結果になり、見た目なりにSiC%が減少しているという結果になりました。

SiC耐火物の水蒸気による腐食

SiC(炭化ケイ素)耐火物は炉内に水蒸気がある環境下ですと、激しく腐食してしまいます。SiC corrosion

SiCが元の濃いグレー色から薄い白っぽい色になり、反ったり割れたり膨張したりし、強度も著しく落ち、固いSiC耐火物がボソボソになってしまいます。SiC corrosion UP

これは水蒸気によって粒界腐食が起き、SiC (炭化ケイ素)とH2O(水) が反応し、SiO2(シリカ)やSi(OH)4(ケイ酸)等が生成されるメカニズムの様です。実験によると300℃でもSiCの粒界腐食を起こすとの事ですので、製品の釉薬が十分に乾ききっていない場合、SiC棚板にアルミナコーティングを塗った後十分に乾ききっていない場合、又は連続熱処理炉で冷却水が炉内に侵入してしまうような場合は、明らかにSiC耐火物に対して悪影響を及ぼしますので注意が必要です。

参考資料「材料と環境49(11)2000 P706~709 300℃の水蒸気中における炭化ケイ素焼結体の腐食挙動」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcorr1991/49/11/49_11_706/_pdf

 

SiCと硫化物の爆発的反応

ある食器メーカー様より「1枚の棚板だけ支柱の周りを中心にSiCがはじけて、製品上にまで飛んだ」という連絡を受けました。下がその時の写真です。SiC Sulfide 1

かなり激しく表面がコーティングごとはじけ飛んでいるのが見て判ります。SiC Sulfide 4UP

又、見事に支柱の周りだけですので、支柱が原因だと推測し色々調べました。SiC Sulfide 3

工場内の支柱置き場に置いてあった他の支柱を確認したところ、黒っぽい粉が支柱の上に載っており、分析したところその粉からは酸化カルシウム(CaO)と三酸化硫黄(SO3)が多く検出されました。これら2物質は炉内昇温過程で化合し硫酸カルシウム(CaSO4)となり、硫酸カルシウム等の硫化物とSiCはある温度に達すると爆発的反応を起こします。この黒っぽい粉は、状況的にも成分的にも支柱置き場の上の天井スレートの一部が降った物と考えられます(スレート成分にはCaとSO3が含まれますので)。SiC Sulfide cause即ち今回の問題の原因は「天井スレートからの落下物が支柱の上に載り、それが炉内高温下でSiCと接触し爆発的反応を起こした」という事になります。

海外の現場でも同様の現象が起きております。SiC Sulfide 4

石膏型にもCaOとSO3が含まれますので、石膏が焼成前の製品に付着したりすると同様の現象が起こる可能性がありますので注意が必要です。

炭化ケイ素(SiC)の製造工程 / 現地SiC製錬工場レポート4(最終回)

中国北西部蘭州市郊外にある炭化ケイ素(SiC)製錬工場のレポート第4回(最終回)です。今回は製錬されたSiCを見てゆきます。

石英砂=1.7 : 石油コークス=1.3の割合で混ぜた原料を電気抵抗炉に投入し中心にカーボンの粉で電極を作り、そこに20,000KWを10日間通電させた結果、炉の中心温度は約2,000℃に達し、下記の様にSiCが製錬されます。

製錬イラスト_書き出し用図で示した通り、中心の電極に近い部分ほど高密度のSiC 98.5%ができ(A)、その周りも同じSiC 98.5%ですが中心よりも密度が低くなります(B)。その外側がSiC 88%の層になります(C)。この中心に近いSiC 98.5%高密度部分(A)が高品質のSiC耐火物の原料となり、この部分をいかにきちんと選別して供給できるかが品質の鍵となります。尚、高密度SiC 98.5%の周りのSiC 98.5%部分(B)は研磨材や砥石の原料となり、その外側のSiC 88%部分(C)は製鉄用の脱酸材(投げ込み材)となります。反応しなかった電極から離れた部分の原料は次の製錬に使われます。1回の製錬で1基の炉で図のSiC 98.5%~88%部分が約600トンできます。

製錬されたSiCは大きく砕かれ部位別に選別されます。SiC ingot 1この地域はステップ気候で年間降水量が約300mmと少ないですが、製錬されたSiCはきちんと管理された屋根付き保管庫にて保管されます。SiC ingot 4SiC ingot 3

下の写真のインゴットの中で、上部の粒子が粗く見える部分がSiC 98.5%の密度の少し低い部分で、その下の少し白っぽく見える部分がSiC 98.5%の高密度部分で、下側が炉の中心方向となります。SiC ingot higher densityこれを運搬しやすいように更に細かく砕き1トンバックに入れます。SiC ingot 1 ton bagSiC ingot 5この大きさの粒が流通しているいわゆるSiCインゴットです。ここからまたSiC粉砕・整粒加工会社に運ばれ、粒度別に選別されSiC耐火物の原料が完成します。

良いSiC製品を作るには良い原料の安定供給が必要不可欠です。

炭化ケイ素(SiC)の製造工程 / 現地SiC製錬工場レポート3

中国北西部蘭州市郊外にある炭化ケイ素(SiC)製錬工場のレポート第3回です。今回は実際のSiC製錬を見てゆきます。

ここには電気抵抗炉が前後左右に4基並んでおり、順番に操業してゆきます。20,000KWで10日間通電し、中心の電極付近は約2,000℃に達します。原料投入から製錬SiCの取り出しまで1炉当たり約15日間での操業です。

resistance furnaces front

terminal

石英砂=1.7 : 石油コークス=1.3の割合で混ぜた原料はクレーンで電気抵抗炉に投入されます。原料中心部にはカーボンの粉を押し固めて電極が作られます。下写真の右側の炉は製錬された後、電極から遠く反応しなかった周りの原料を取り除いた状態で、左側奥の炉は原料投入が終わり製錬待ちの状態です。

SiC smelting 11基の炉の長さは約100m、製錬されたSiCの高さは約3m、一回の製錬で約600t/炉のSiCが作られます。

SiC smelting size 2SiC smelting size 1

先の写真の反対側から。製錬後のSiCが左、これから製錬される炉が右で鋼材と断熱レンガで高く壁が作られています。left after SiC smelting right before smelting

奥の2基の炉の内、手前の炉はちょうどSiC製錬が終わったところです。

SiC 4 resistance furnacesSiC just after smelt from side壁を登って上から炉の中を撮った写真が下です。SiC just after smelt from UPまだ少し煙が立ち上っています。SiC製錬の反応後、投入された原料は当初よりも体積が減っているのが判るかと思います。コークス由来の硫黄の黄色も少し見えます。因みに右奥の炉はこれから原料を投入する炉で今は空です。この様に4つの炉を順番に操業しています。この工場のSiC年間生産量は約20,000トンです。

次回は製錬されたSiCについて見てゆきます。