フォークリフト式シャトル炉

シャトル炉でも一般的には台車があり、台車の上にSiC棚板等で棚組して製品を積載し台車ごと炉に入れますが、愛知県の築炉メーカーM社のシャトル炉(デュポー式 LPGキルン)では、台車を無くし、代わりに巨大な3本ツメの専用フォークリフトを使って棚組ごと直接炉に入れます。lift and kiln

台車が無い代わりに、下の写真の様に「製品仕込み台」と言われる台の上で棚組し製品を載せて行きます。SiC shelves before firing

それを巨大な3本ツメの電動フォークリフトで丸ごと持ち上げ、そのまま炉に入れます。この地元の製陶所様の炉は約4㎥で、1窯分を丸ごと一気に窯入れ・窯出しします。

SiC shelves with lift

この炉のメリットは台車が無いおかげで炉内が完全密封型で、炉内温度分布や炉内雰囲気を均一にコントロールしやすい点です。又窯おこし後は1窯分を丸ごとリフトで好きな場所に移動できる為、作業効率が良いとの事です。こちらの製陶所様では炉は2基あり、Vの字に配置されています。

小型トンネルキルンその2

前回に続き別の小型のトンネルキルンです。M Mini tunnel kiln A

地元の築炉メーカーM社製で「マイティーキルン」という名前が付いています。こちらの製陶所様の炉は全長40m、台車長さ1,500mm、炉内台車26台車、操業は送車40分/台車でIn/Out 17時間、1,300℃還元焼成です。M Mini tunnel kiln B

前回の製陶所様と違いこちらはサヤ(匣鉢)が約85%、SiC棚板が約15%の割合で台車が組まれています。M Mini tunnel kiln C

こちらの炉もレールは床の上に設置されている仕様です。

小型トンネルキルンその1

連続焼成炉であるトンネルキルンの小型版です。T Mini tunnel A

地元の築炉メーカーT社製で「ミニトン」と呼ばれる炉です。こちらの製陶所様の炉は全長30m、台車長さ900mm、炉内台車30台車、操業は送車24分/台車でIn/Out 12時間、1,220 - 1,250℃酸化焼成で、全てSiC棚板によって台車が組まれています。T Mini tunnel B通常のトンネルキルンと「ミニトン」の違いは、炉・台車のサイズはもちろんですが、通常のトンネルキルンは台車のレールが床に埋め込まれているのに対し、「ミニトン」は床の上にレールが設置されている点です。尚、「ミニトン」はコンパクトな設計ですが、それがゆえにヒートカーブが急だったりと耐火物にとっては消耗しやすい厳しい条件である場合が多いです。

トンネルキルン

前回記事のローラーハースキルンとは別の連続焼成炉であるトンネルキルンです。Tunnel kiln

セラミックス焼成炉の中では一番焼成量を多くできる炉で、棚組みされた台車が連続して炉に入ってゆきます。耐火物にとってはローラーハースよりも優しく、シャトル炉よりは厳しい条件の場合が多いです。

大量生産に向く焼成炉で製品当たりの焼成コストは一番安くなりますが、逆に一定量の製品投入が必要な為、多品種小ロット傾向の最近の日本では少なくなってきている炉の種類です。

ローラーハースキルン

前回記事の様に支柱で上に高く棚組みするシャトル炉とは対照的に、1段ないし2段のみで炉に入っていくローラーハースキルンという炉があります。Roller Hearth Kiln

ローラーハース:Roller Hearth(=ローラーの炉床)式のKiln(=炉)という意味で、セラミックス焼成炉の1種で、写真のローラーが回転し、セッターを炉に搬送してゆく連続焼成炉です。

特徴は炉内高さが低いので各製品にかかる温度を均一にしやすく、焼き上がり寸法や色などが均一になりやすいのと、全方向から加熱できる為比較的短時間での迅速焼成が可能な点です。ただしヒートカーブは急なので耐火物にとっては厳しい条件ではあります。

ムライト支柱組台車

前回記事のスペースを大きく取ったSi-SiCビーム組台車とは対照的に、低めのムライト支柱で隙間なく組まれた台車の写真です。Highly filled Kiln Car

シャトル窯で食器を焼成する際の一般的な棚組方式で、SiC棚板1枚当たりL型ムライト支柱を3個使用し棚組みしています。立ちの低い皿系統の製品が多い為それに合わせて低めの支柱を使い、なかなかの充填率になっています。

Si-SiC(反応焼結SiC)ビーム組台車

少し前の海外の写真となりますが、Si-SiC(反応焼結SiC)ビームと酸化物結合SiC支柱を組み合わせた台車の写真です(棚板も酸化物結合SiC棚板)。SiSiC Beam kiln carSi-SiCビーム台車の特徴は支柱の数を減らし空間を広く取る事により大物製品の焼成において窯詰め/窯出しの作業効率が良くなりますし、支柱の数が減る事でガスの省エネも期待できます。また、ビーム=線で棚板を支える形になりますので、SiC棚板の反り軽減にもなります。

尚、写真の台車は支柱を台車に埋め込まずにカートップの上に設置するという日本ではあまり見られないタイプです。

SiCと硫化物の爆発的反応

ある食器メーカー様より「1枚の棚板だけ支柱の周りを中心にSiCがはじけて、製品上にまで飛んだ」という連絡を受けました。下がその時の写真です。SiC Sulfide 1

かなり激しく表面がコーティングごとはじけ飛んでいるのが見て判ります。SiC Sulfide 4UP

又、見事に支柱の周りだけですので、支柱が原因だと推測し色々調べました。SiC Sulfide 3

工場内の支柱置き場に置いてあった他の支柱を確認したところ、黒っぽい粉が支柱の上に載っており、分析したところその粉からは酸化カルシウム(CaO)と三酸化硫黄(SO3)が多く検出されました。これら2物質は炉内昇温過程で化合し硫酸カルシウム(CaSO4)となり、硫酸カルシウム等の硫化物とSiCはある温度に達すると爆発的反応を起こします。この黒っぽい粉は、状況的にも成分的にも支柱置き場の上の天井スレートの一部が降った物と考えられます(スレート成分にはCaとSO3が含まれますので)。SiC Sulfide cause即ち今回の問題の原因は「天井スレートからの落下物が支柱の上に載り、それが炉内高温下でSiCと接触し爆発的反応を起こした」という事になります。

海外の現場でも同様の現象が起きております。SiC Sulfide 4

石膏型にもCaOとSO3が含まれますので、石膏が焼成前の製品に付着したりすると同様の現象が起こる可能性がありますので注意が必要です。

Si-SiC(反応焼結SiC)保護管

Si-SiC(反応焼結SiC)製の熱電対保護管です。SiSiC protection tubeSiSiC protection tube edge一般的な熱電対保護管はアルミナ質の物が多いですが、高強度・高熱伝導・ち密質という特徴からSi-SiC製の保護管が採用される場合もあります。但し、Si-SiCの最高使用温度は1,350℃ですので、その温度以下の焼成に限ります(1,350℃を超えてくると含浸させてある金属シリコンが徐々に出てきてしまいます)。

保護管の先端形状はストレート・ドーム型どちらも可能です。根元側に固定用の溝加工も可能です(焼成前のグリーンの状態で加工)。

Si-SiC(反応焼結SiC)ラジアントチューブバーナー

Si-SiC(反応焼結SiC)製のラジアントチューブバーナーの内筒管(外筒管の中に挿入されるスリーブ)です。Radiant tube burnner inner熱処理炉等のバーナーで使用されます。Si-SiCはセラミックスの中ではかなり熱伝導率が高い材質であり、熱効率が良いです。最高使用温度は1,350℃ですので、金属製バーナーチューブでは垂れたり劣化したりする環境でも長く使えます。穴開けの位置や数は最終焼成前のグリーンの状態で加工しますので、図面に合わせて対応可能です(焼成後は非常に硬くなり、後加工はほぼ不可能となります)。