再結晶SiCプレートの色の変化

再結晶SiCプレートを1340℃で1回焼成したところ、元々のグレーの色(写真左)から緑~紫っぽい色(写真右)に変化しました。

比較の為、それぞれの表面をX線回折で調べたところ、新品(左)と変色品(右)に大きな違いは無く、また変色品に新たな元素の付着もありませんでしたが、表面酸化(もしくは焼成物からのべーパー)によって変色品の方にSiO2が増えていました。

このことから、変色の原因は酸化被膜(SiO2膜)ができた為の構造色(光の干渉)によるものと思われます。チタンの色々な色(チタンの構造色)や、シャボン玉の虹色と同じ原理で、物そのものに色が付いているわけではなく、薄膜干渉と呼ばれる光の現象によって違った色に見えています。

実際、焼成を何回か繰り返すと表面のSiO2膜の厚みが少しづつ厚くなり、薄膜干渉が起きない厚みになって行く為、変色が収まり元の色に戻りました。

屋根瓦焼成用SiC耐火物

屋根瓦の内、粘土瓦はセラミックス製です。1100数十度で焼成されます。その中でも現在一般家屋で一番広く使われている瓦は平らな形状の「平板瓦」です。この平板瓦は小さな部屋くらいもある大きな台車の上にSiC棚棒とSiCセッターを組み合わせた治具に載せられ焼成されます。

瓦が載っていない状態のSiC治具
瓦が載った状態の台車

瓦の変形を押さえながら効率的に安定した状態で焼成するいわゆる斜め焼きです。下のSiC棚棒は大幸セラミックオリジナル品<意匠登録第1410233号>です。

通常、全自動の積載機によって瓦をSiC治具に載せ、焼成後も自動でSiC治具からおろされます。1100数十度は比較的酸化されやすい雰囲気での焼成になりますので、SiC耐火物の耐酸化性能が非常に重要になってきます。性能が悪いとSiC治具は早く変形したり割れたりしラインが頻繁にストップし、せっかくの全自動操業システムの生産効率が下がってしまいます。

 

SiC耐火物の水蒸気爆発

下の写真はSiC棚板で水蒸気爆発が発生した後の棚板の写真です。

表面に液体のアルミナコーティングをハケで塗り、約15分扇風機を当てた後、棚板を重ねて壁に立てかけ、48時間後に炉に入れて使用した際、炉内温度が約600-700℃になった時点で炉内で爆発したとの事です。

これは表面に塗られた液体が完全に乾かないうちに重ねられた結果、水分が表面から蒸発できずに棚板内部の微細な気孔等に浸透し、そのまま炉内で加熱された事によりしみ込んだ水が水蒸気化し(体積は1700倍になり)、閉じ込められた水蒸気の圧力で爆発したという現象です。

えぐれた部分を切断したのが下の写真です。

SiC棚板に限らず、耐火物はどれも水濡れ厳禁です。濡れてしまった場合はゆっくり時間をかけて天日で乾かすか、ゆっくり乾燥室で乾かしてからご使用ください。

SiC耐火物の充填密度の差

一般的なプレス成型品の酸化物結合SiC耐火物の良し悪しの基準の一つに充填密度の差があります。

下の写真は当社と他社のSiC耐火物ですが、外観でも右側の他社品は少し締まっていない感じがします。

それぞれを切断し断面を比較した物が下の写真です。切断面を見て判る通り内部には更に差が有り、右の他社品はSiC原料がしっかり充填できていない箇所が多々有ります。

切断時も他社SiCは簡単に切れ、金づちで叩いても他社SiCは比較的すぐに割れました。

充填密度が低いと機械的強度が弱いのはもちろんですが、SiC耐火物の寿命に最も影響する耐酸化性能も悪く、空隙から内部にまで酸素が入り酸化されやすく、SiCの劣化が早いです。

再結晶SiCサヤ(匣鉢)

再結晶SiC(Recrystallized SiC / Re-SiC) 製のサヤ(匣鉢)です。写真のサヤ(匣鉢)のサイズは300 x 230 x (70+10) H です。

再結晶SiCの特徴は、SiC99%と他のSiC耐火物よりもシリカ分が圧倒的に少ない点で、シリカと反応してしまう材料・製品の焼成には有利です。

ただし、大気雰囲気での焼成では(焼成温度にもよりますが)酸素O2と反応し少しずつですが表目にシリカSiO2は生成されます。大気雰囲気での最高使用温度は1,600℃です。

一方、不活性ガス雰囲気や真空雰囲気での焼成ですと2,000℃以上でも持つ場合があります。

再結晶SiCはアルミナ系耐火物よりも機械的強度があり、熱伝導率も良く、ヒートショックにも強いのが特徴です。

 

再結晶SiC耐火物の見た目の違い 表面状態比較分析2

シビアな製品を焼成する場合に、載せる製品と棚板との接触具合が違ったり、表面粗さが違うと製品に影響が出る可能性も考えられますので、その点を検証する為再結晶SiCの見た目の違う部分の表面状態を比較分析しました。

キラキラの強いオモテ・キラキラの弱いウラを各10か所測定し、分布を表示したのが下のグラフです。(オモテ=青 ウラ=赤)

  視野 2.0 x 2.7mm   パラメーター オモテ面(青) ウラ面(赤)
Spd /㎟ 平均値   732    1728
Spd /㎟ 標準偏差   171   328
Spc /㎟ 平均値   606   937
Spc /㎟ 標準偏差    56   213

この結果を見ると、再結晶SiCのキラキラの強いオモテ面は表面の凹凸の山の頂点密度が低く(山の数が少なく)、山の頂点は比較すると尖がっていないという事になります。尚、粗さでよく使われるパラメーターであるRaはほぼ同じでした。

製品がそれぞれの上に載った時にどちらが接触面積が大きいかは一概には言えません。また表面の山の数と山の鋭さは違いますが、それらがセラミックス製品焼成時の収縮に影響するのかしないのかも実際の製品でテストするのが良いかと思います。

再結晶SiC耐火物の見た目の違い 表面状態比較分析1

再結晶SiC耐火物でキラキラの反射が強いオモテ面(左)と弱いウラ面(右)との表面状態を比較分析しました。

下の画像は光学顕微鏡での見た目と、レーザー顕微鏡によるマッピングで高低差を表しています。

更に拡大すると、キラキラの強いオモテ面の方が結晶粒が大きく、結晶粒の形状が整い平面部が形成されているのが判ります。

キラキラが強い理由はこの結晶粒が大きく、平面部が広い整った形状がより光を多く反射する為です。

オモテ3D画像拡大ウラ3D画像拡大

見た目の違うこれらの2つの再結晶SiCの表面粗さや表面状態の更に詳しい比較分析は次回の記事にて。

再結晶SiC耐火物の表面見た目の違い

同じ再結晶SiCでも、物によって、オモテ・ウラによって、または同じ物の同じ面でも表面の見た目に違いがあったりします。下の二つの再結晶SiC製トレーは元は同じ配合の物です。

写真では中々うまく現物の感じを映し出せないですが、左の物の方が、蛍光灯の下などで見るとキラキラが多く強く反射します(太陽光の下では蛍光灯の下ほどではないですが)。触った感じもキラキラした部分の方が少しだけざらざらしている感じもしますが、見た目ほどの差は感じられません。

この差ができる原因は成型時のSiC原料の粒度の偏りではなく、製造時の焼成によるものです。炉内で多く熱を受ける部分はSiCが再結晶化する際により結晶粒が成長する為です。

製造工程・焼成時の炉内での設置方向や位置、固定方法、隣の製品との兼ね合い等で、焼き上がりの再結晶SiC耐火物の表面見た目が変わったりしますが、では結晶粒が成長するとどういう理屈でキラキラが多く強く見えるのか?の詳細分析は次回の記事にて。

N-SiC(窒化ケイ素入りSiC)チューブ

N-SiC(窒化ケイ素30%弱+SiC)で作った炉内に設置するチューブです。

片側封じのチューブ状で片側に穴が開いており、ここからエアーを炉内に注入します。

急激な温度変化と強酸化雰囲気により、強度のあるSiCでも痛みが出やすい使用条件ですが、弊社販売のN-SiCの材質は従来品SiCよりも耐久性があるという評価を頂いております。ヒートショックに関してはN-SiCは他のSiCよりも比較的耐久性があるというデータもありますし、条件にもよるかと思いますが、耐酸化性能も良いという事になります。

ムライト・コーディライト質大型支柱

ムライト・コーディライト質の大型支柱です。

ジョイント部分と支柱部分があり組み合わせて使います。

通常のL型支柱と比べるとその大きさが判るかと思います。

良く使われるパターンはSi-SiCビーム組用の支柱で、ジョイントの穴やキャップの凹み部分でSi-SiCを受けます。

尚、コーディライトが入っている為、1300℃を超える温度では注意は必要です。