耐火物の圧縮強度について

圧縮強度とは、上から荷重をかけたとき単位面積当たりどのくらいの荷重まで破壊されずに耐えられるかを示す強度です。press strength

例えば上の写真の様なムライト製支柱の圧縮強度は約680kgf/㎠(室温)という数値になりますが、これはある試験片を上下面研磨し、専用機器にて測定した結果の一つであり、実際の現場での支柱がその数値まで耐えられるかという話になるとまた微妙に違ってきます。

例えば実際の支柱の接地面や支柱が接する相手の接触面が平滑でなく凸部がある場合は荷重がそこに集中し早く破壊されますし、支柱の高さが高い場合は中央部から亀裂が発生する確率が上がりそこから早く破壊が起きたりしますので、各種耐火物のデータ表などに出ている圧縮強度の数値は保証値ではなくあくまでも目安です。実際の耐火物の強度を知りたい場合は実際にその物を専用機器にかけ測定するのが一番正確です。この件の関連記事はこちらです。

ムライト支柱の鉄分の由来

セラミックス焼成時に一般的に使用される支柱はアルミナ約70%前後のムライト支柱です。この支柱にはいくらかの鉄分が入ってきますが、その由来には2パターンあります。

一つはプレスの金属金型由来で、特にI型支柱等の比較的肉厚の支柱は成型時のプレスを打つ回数が多くどうしても金型と擦れ合い鉄粉が支柱表面にうつりやすいです。もう一つは原料由来で、ムライト支柱の主原料は天然鉱物であるアンダルサイトであり大なり小なり原料の中に鉄分が入っており、その割合にもぶれがあります。

Mullite iron spots

尚、再生リサイクル原料を使うとこの様な原料由来の鉄粉が出る割合が低かったりしますが、支柱その物の性能から言うと天然鉱物のバージン原料からの方が良い物ができます。

因みに、支柱は通常直接製品に接する事は無いですので、焼成時に支柱に含まれる鉄粉が製品に悪影響を及ぼすという事はありません。

 

ムライト板のくり抜き加工

ムライト質の板をウォータージェット加工してくり抜いたものです。ウォータージェット加工品1

ウォータージェット加工は費用は高いですが、焼成後の板を加工しますので、曲線でも切断面がきれいかつ正確に加工できます。ウォータージェット加工品アップ

ムライト板の場合は、焼成前の生の状態で穴開けポンスを使ってくり抜き加工したり、切取り加工したりもできますが、加工面はもっとぼそぼそで粗くなります(費用はこの生加工の方が安いです)。

尚、SiC板の場合は原料に粒度の粗い物も入っている為生の状態での加工はできず、焼成後は非常に硬いのでこのムライト板の様な大きな穴開け加工はできません。

SiC棚板の鉄分と色

前々回のブログ「SiC原料と鉄分」の通り、グレードの落ちるSiC原料の場合は鉄分が多く含まれたりします。鉄分は耐火物の新品時には赤茶色に見えなくても、一度焼成で使用すると赤茶色に出てきたりします。

下の写真は2~3回焼成に使用した後の他社製のSiC棚板(SiCプレート)です。他社SiC棚板鉄粉1

側面に赤茶色の酸化鉄が出てきております。

この種の酸化物結合SiC耐火物においては、ある程度鉄分が含まれるのは普通で性能には影響ないのですが、鉄分があまりに多いと、下の写真の様にコーティング面を突き破って表面に赤茶色の鉄分が析出してしまい、それが上にのせたセラミックス製品に色移りしたり、SiC棚板底面から鉄分が析出して落下した場合は、下の段の製品に色移りしたりと不具合が発生します。

他社SiC棚板鉄粉2

尚、ユーザーの炉で使用後に初めて赤茶色に出る理由は、酸化鉄でもFeO, Fe3O4の状態では色は黒色で、焼成雰囲気によって酸化鉄の組成がFe2O3になると色が茶色になる事に由来します。

吸水率の測り方

耐火物の物性値測定で自分でも簡単に測れるのが吸水率です。

①まずは、測定したい耐火物の水分をしっかり飛ばす為、110℃くらいで数分間加熱します。あまり温度を上げすぎると内包する水分が高圧の水蒸気となり耐火物にダメージを与えたり、ひどい場合には爆裂して粉々に砕ける危険があります。電子レンジを使用しても良いですが、同じく破裂には気を付けて下さい。

②乾燥させた耐火物の重量を量ります。

2016 March blog 吸水前重量

③気孔にしっかり水分を吸い込ませる為に、30分くらい沸騰したお湯に入れます。

2016 March blog 沸騰吸水

④取り出して表面の水分を拭き取り、再び重量を量ります。

2016 March blog 吸水後重量

吸水後:61.68g ÷ 吸水前:54.61g=112.9% でこの耐火物の吸水率は12.9% となります。

尚、内部に独立した気孔(密閉気孔)がある場合は、そこには当然水は入っていきませんが、耐火物の場合はそういったケースはあまり無いようです。

SiCプレートの割れ方の違いとその原因

使用中にSiCプレート等の板状耐火物が割れる原因で最も多いのがヒートショック(熱衝撃)です。

ヒートショック(熱衝撃)による割れとは、炉内の温度変化の際に1枚のプレートで縁と中心部分とで温度差が生まれ、膨張・収縮のひずみが発生しプレートがそのひずみに耐え切れずに割れてまう現象です。下の写真はヒートショックにより割れたSiCプレートです。

2016 blog crack by heat shock

炉内降温時には板の中心が一番温度が高く、即ち一番膨張している部分の為、(スリットの無いプレートの場合は)大体この様に比較的緩やかなカーブで、割れ目は縁から中心を通りプレートは真っ二つに割れます。

一方下の写真は全て物理的衝撃により割れたSiCプレートです。

2016 blog crack by impact

割れ目が二股以上になっていたり、割れ目に鋭角な部分があったりと、割れ方の違いが見て取れると思います。

この写真のSiCプレートは故意に落として割ってみた物ですが、例えば、炉に入れる前にどこかに当ててしまったり、立て掛けてあった物を倒してしまったりとプレートに物理的衝撃が加わった場合、その時割れていなくても目に見えにくい微細なクラックが入ってしまい、炉内で昇温/降温し、膨張/収縮した時にその微細クラックに沿ってプレートが割れるというケースもございます。その場合はこの下の写真のような割れ方になります。

セラミックスの曲げ強度試験

下の写真はアルミナ・ムライト質セラミックスの3点曲げ強度試験の様子です。
曲げ強度試験1

写真の様に試験サンプルの下2点を支持し、その支点間の中心1点に荷重を徐々に加えてゆき、試験サンプルが破壊した時の負荷が曲げ強さの数値となります。ちなみに各支点にはせん断作用による破壊を防ぐ為に緩衝材をはさみます。

曲げ強度試験2

ある程度の強度を予想し、それに基づいてかけてゆく負荷スピードを調整します。

ちなみにアルミナ・ムライト質のセラミックスはアルミナ%が多いほど(常温での)機械的強度が強いというわけではなく、ある程度の結合剤(SiO2等)があった方が常温での強度はあるようですし、素材の粒径や焼結度合(緻密さ)等にもよって強度は大きく変わってきます。

コーディライトとフリーカーボンの反応

コーディライト製品を新品の再結晶SiC棚板で焼成したところ、SiC棚板表面にピンクや緑の色が出ました。2015年2月blog再結晶SiC Plate22015年2月blog再結晶SiC Plate1

これはコーディライト中の酸化マグネシウム(MgO)・アルミナ(Al2O3)からスピネル(MgAl2O4)が生成され、新品の再結晶SiC棚板中のフリーカーボン(C)がスピネル中に固溶する(スピネル中の酸素OがカーボンCに入れ替わる)事でピンクっぽい色になった様です。

またフリーカーボンのスピネルへの固溶の度合いにより緑色等いろいろな色にもなりうる様です。

新品再結晶SiC棚板は初回空焼き(製品を載せずに焼成)するか、何回か焼成で使用し棚板上にフリーカーボンがなくなってからコーディライト製品を焼成すればこの様な色は出ないでしょう。