SiC耐火物の水蒸気爆発

下の写真はSiC棚板で水蒸気爆発が発生した後の棚板の写真です。

表面に液体のアルミナコーティングをハケで塗り、約15分扇風機を当てた後、棚板を重ねて壁に立てかけ、48時間後に炉に入れて使用した際、炉内温度が約600-700℃になった時点で炉内で爆発したとの事です。

これは表面に塗られた液体が完全に乾かないうちに重ねられた結果、水分が表面から蒸発できずに棚板内部の微細な気孔等に浸透し、そのまま炉内で加熱された事によりしみ込んだ水が水蒸気化し(体積は1700倍になり)、閉じ込められた水蒸気の圧力で爆発したという現象です。

えぐれた部分を切断したのが下の写真です。

SiC棚板に限らず、耐火物はどれも水濡れ厳禁です。濡れてしまった場合はゆっくり時間をかけて天日で乾かすか、ゆっくり乾燥室で乾かしてからご使用ください。

SiC耐火物の充填密度の差

一般的なプレス成型品の酸化物結合SiC耐火物の良し悪しの基準の一つに充填密度の差があります。

下の写真は当社と他社のSiC耐火物ですが、外観でも右側の他社品は少し締まっていない感じがします。

それぞれを切断し断面を比較した物が下の写真です。切断面を見て判る通り内部には更に差が有り、右の他社品はSiC原料がしっかり充填できていない箇所が多々有ります。

切断時も他社SiCは簡単に切れ、金づちで叩いても他社SiCは比較的すぐに割れました。

充填密度が低いと機械的強度が弱いのはもちろんですが、SiC耐火物の寿命に最も影響する耐酸化性能も悪く、空隙から内部にまで酸素が入り酸化されやすく、SiCの劣化が早いです。

再結晶SiCサヤ(匣鉢)

再結晶SiC(Recrystallized SiC / Re-SiC) 製のサヤ(匣鉢)です。写真のサヤ(匣鉢)のサイズは300 x 230 x (70+10) H です。

再結晶SiCの特徴は、SiC99%と他のSiC耐火物よりもシリカ分が圧倒的に少ない点で、シリカと反応してしまう材料・製品の焼成には有利です。

ただし、大気雰囲気での焼成では(焼成温度にもよりますが)酸素O2と反応し少しずつですが表目にシリカSiO2は生成されます。大気雰囲気での最高使用温度は1,600℃です。

一方、不活性ガス雰囲気や真空雰囲気での焼成ですと2,000℃以上でも持つ場合があります。

再結晶SiCはアルミナ系耐火物よりも機械的強度があり、熱伝導率も良く、ヒートショックにも強いのが特徴です。

 

再結晶SiC耐火物の見た目の違い 表面状態比較分析2

シビアな製品を焼成する場合に、載せる製品と棚板との接触具合が違ったり、表面粗さが違うと製品に影響が出る可能性も考えられますので、その点を検証する為再結晶SiCの見た目の違う部分の表面状態を比較分析しました。

キラキラの強いオモテ・キラキラの弱いウラを各10か所測定し、分布を表示したのが下のグラフです。(オモテ=青 ウラ=赤)

  視野 2.0 x 2.7mm   パラメーター オモテ面(青) ウラ面(赤)
Spd /㎟ 平均値   732    1728
Spd /㎟ 標準偏差   171   328
Spc /㎟ 平均値   606   937
Spc /㎟ 標準偏差    56   213

この結果を見ると、再結晶SiCのキラキラの強いオモテ面は表面の凹凸の山の頂点密度が低く(山の数が少なく)、山の頂点は比較すると尖がっていないという事になります。尚、粗さでよく使われるパラメーターであるRaはほぼ同じでした。

製品がそれぞれの上に載った時にどちらが接触面積が大きいかは一概には言えません。また表面の山の数と山の鋭さは違いますが、それらがセラミックス製品焼成時の収縮に影響するのかしないのかも実際の製品でテストするのが良いかと思います。

再結晶SiC耐火物の見た目の違い 表面状態比較分析1

再結晶SiC耐火物でキラキラの反射が強いオモテ面(左)と弱いウラ面(右)との表面状態を比較分析しました。

下の画像は光学顕微鏡での見た目と、レーザー顕微鏡によるマッピングで高低差を表しています。

更に拡大すると、キラキラの強いオモテ面の方が結晶粒が大きく、結晶粒の形状が整い平面部が形成されているのが判ります。

キラキラが強い理由はこの結晶粒が大きく、平面部が広い整った形状がより光を多く反射する為です。

オモテ3D画像拡大ウラ3D画像拡大

見た目の違うこれらの2つの再結晶SiCの表面粗さや表面状態の更に詳しい比較分析は次回の記事にて。

再結晶SiC耐火物の表面見た目の違い

同じ再結晶SiCでも、物によって、オモテ・ウラによって、または同じ物の同じ面でも表面の見た目に違いがあったりします。下の二つの再結晶SiC製トレーは元は同じ配合の物です。

写真では中々うまく現物の感じを映し出せないですが、左の物の方が、蛍光灯の下などで見るとキラキラが多く強く反射します(太陽光の下では蛍光灯の下ほどではないですが)。触った感じもキラキラした部分の方が少しだけざらざらしている感じもしますが、見た目ほどの差は感じられません。

この差ができる原因は成型時のSiC原料の粒度の偏りではなく、製造時の焼成によるものです。炉内で多く熱を受ける部分はSiCが再結晶化する際により結晶粒が成長する為です。

製造工程・焼成時の炉内での設置方向や位置、固定方法、隣の製品との兼ね合い等で、焼き上がりの再結晶SiC耐火物の表面見た目が変わったりしますが、では結晶粒が成長するとどういう理屈でキラキラが多く強く見えるのか?の詳細分析は次回の記事にて。

N-SiC(窒化ケイ素入りSiC)チューブ

N-SiC(窒化ケイ素30%弱+SiC)で作った炉内に設置するチューブです。

片側封じのチューブ状で片側に穴が開いており、ここからエアーを炉内に注入します。

急激な温度変化と強酸化雰囲気により、強度のあるSiCでも痛みが出やすい使用条件ですが、弊社販売のN-SiCの材質は従来品SiCよりも耐久性があるという評価を頂いております。ヒートショックに関してはN-SiCは他のSiCよりも比較的耐久性があるというデータもありますし、条件にもよるかと思いますが、耐酸化性能も良いという事になります。

ムライト・コーディライト質大型支柱

ムライト・コーディライト質の大型支柱です。

ジョイント部分と支柱部分があり組み合わせて使います。

通常のL型支柱と比べるとその大きさが判るかと思います。

良く使われるパターンはSi-SiCビーム組用の支柱で、ジョイントの穴やキャップの凹み部分でSi-SiCを受けます。

尚、コーディライトが入っている為、1300℃を超える温度では注意は必要です。

SiC棚板が機械的衝撃で割れた場合の割れ方

使用中の炉内でSiC棚板が割れる原因は熱衝撃(ヒートショック)がほとんどですが、機械的衝撃で割れた場合はその破断面、割れ方に特徴があります。

下の写真は機械的衝撃で割れたSiC棚板です。

割れ目が二股になっており、また割れ目が熱衝撃による割れの場合よりも少し直線的だったり、カクっと折れ曲がっていたりします。

破断面も熱衝撃による割れの場合よりも凸凹していたりもします(常温で割れた破断面は当然キラキラしています)。

下の写真はまた別のSiC棚板ですが、機械的衝撃が原因の場合は割れ目のラインがギザギザしている場合があります(熱衝撃が原因の場合は割れ目はもっと滑らかな曲線を描きます)。

炉に入れる前に機械的衝撃を与えてしまったが完全には割れずに、クラックに気付かずにそのまま炉に入れて焼成過程の熱による膨張収縮の応力を受けて初めてその前に入っていたクラックから完全にSiC棚板が割れるという場合もあります。

宜しければ、同様の過去の記事「SiCプレートの割れ方の違いとその原因」もご参照ください。

SiC棚板破断面で光沢と艶消しが混在している場合

回の記事で、SiC棚板の破断面で、「光沢状態=降温時の割れ」「艶消し状態=昇温時の割れ」とご説明しました。

下の写真はSiC棚板破断面で光沢と艶消しが混在している珍しいパターンです。

破断面の左と右は艶消しになっていますが、破断面中心付近はSiC粒の光沢が残っています。これは、最初に棚板の端の方からクラックが入り、最後に残った中心部が降温時に割れたという事が見て取れます。尚、ヒートカーブ中の昇温時に棚板の端が割れて艶消しになったのか、それとも降温時にクラック入ったのが、そのまま次また焼成されてヒートカーブの700~1000℃弱を通過し艶消しになったのかはこの写真だけでは判断できません。