新品SiC棚板の微細クラックによる焼成時の割れ

ある顧客に納入した新品SiC棚板が、使い始めて3回目・4回目の焼成時に炉の中で下の写真のように割れてしまいました。

微細クラックによる割れ1

微細クラックによる割れ2

見てお判りの方もいらっしゃるかも知れませんが、通常の熱衝撃による割れ方とは違い、何らかの機械的衝撃によって割れた時のような割れ方をしており、しかもどれも似たような亀裂の入り方です。割れた時の状況として、温度上昇中の約600℃くらいの時に割れが発生したのを確認しておりますが、通常熱衝撃で割れる場合は温度が下がる時の方が多いと言われております。

また更に不思議なのは新品から使用し3回目・4回目の焼成時に割れたという点です(通常板に問題がある場合は1回目の焼成で割れる場合がほとんどですので)。しかも、下の写真の様にSiC棚板の割れた箇所の下段の製品にはその上段の棚板の亀裂に沿ってSiCの粉が落ちて付着しておりました。


左:下段製品に落ちたSiC粉 右:上段SiC棚板の亀裂
左:下段製品に落ちたSiC粉 右:上段SiC棚板の亀裂

当初全く原因が判りませんでしたが、調べていくうちに”新品の未使用時に、立てかけていたこのSiC棚板を何枚か地面に倒していた”という事が判りました。

即ち、この現象は「新品未使用時に地面に棚板を倒した事により完全には割れていないが棚板に微細クラックが入り、初回~2, 3回までの焼成には耐えたが、3, 4回目の焼成時に耐え切れずに割れた」という事になります。又、初回~2, 3回の焼成時にその微細クラック部分は焼成時の棚板の膨張・収縮により、クラック断面が擦れてSiC粉が生成され微細クラック断面に蓄積し、焼成3, 4回目に割れた時いっきに下の製品にそのSiC粉が落ちて付着したという事になります。

非常に珍しいケースですが、今回のような現象が起きたメカニズムは「新品時に機械的衝撃により出来た微細クラックが、初回~2, 3回の焼成の間にじょじょに亀裂が大きくなり3,4回目の焼成で最終的に完全に割れた」という事になります。