SiC(炭化ケイ素)棚板の使用条件/焼成雰囲気とその影響

SiC(炭化ケイ素)棚板の使用条件で一番影響を受けるのは、焼成温度と言うよりもどちらかと言えば焼成雰囲気の影響を強く受けます。

下の写真は約1,200℃の強い酸化焼成雰囲気で使用されたSiC棚板ですが、裏面にSiO2(シリカ)が生成されテカテカ光っているのが判るかとかと思います。
2015年4月BlogSiC棚板てかり

こういった焼成条件で使われると、SiC棚板自体にも曲がりが発生しやすかったりします。
2015年4月BlogSiC棚板曲がり

逆に1,300℃の還元雰囲気焼成の場合はここまで裏面にシリカが生成される事はなく、比較して曲がりも起きにくかったりします。

SiCは1,100℃後半~1,200℃弱の温度で酸化の影響を一番受けやすいといわれ、1,300℃以上の高温焼成よりも、低温の酸化焼成の方がSiC棚板にとっては過酷な条件となります。

コーディライトとフリーカーボンの反応

コーディライト製品を新品の再結晶SiC棚板で焼成したところ、SiC棚板表面にピンクや緑の色が出ました。2015年2月blog再結晶SiC Plate22015年2月blog再結晶SiC Plate1

これはコーディライト中の酸化マグネシウム(MgO)・アルミナ(Al2O3)からスピネル(MgAl2O4)が生成され、新品の再結晶SiC棚板中のフリーカーボン(C)がスピネル中に固溶する(スピネル中の酸素OがカーボンCに入れ替わる)事でピンクっぽい色になった様です。

またフリーカーボンのスピネルへの固溶の度合いにより緑色等いろいろな色にもなりうる様です。

新品再結晶SiC棚板は初回空焼き(製品を載せずに焼成)するか、何回か焼成で使用し棚板上にフリーカーボンがなくなってからコーディライト製品を焼成すればこの様な色は出ないでしょう。

SiC保護管

SiC保護管の紹介です。

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写真の物は反応焼結SiC(Si-SiC)製の保護管です。

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サイズは外径30mm( 内径18mm)x 長さ約900mm で片側封じの形状です。

反応焼結SiCはほぼ緻密体ですので、SiC耐火物の中でも強度が強く、熱伝導率も良く、ガスの侵入も防げますので、中にアルミナ保護管を入れて使用する二重管タイプの熱電対の外筒管等に使用されます。

但し、1350℃以上の使用環境ですと含浸させたSi(金属シリコン)が溶け出てしまいますので1350℃未満での使用に限定されます。

SiCの劣化と強度

下の写真は他社製のSiCキャップです。

他社SiCキャップ劣化1

SiCキャップはストラクチャーパイプの上にはめ込み、上からの荷重を支える窯道具ですが、その荷重の影響か(強いはずである)SiCキャップにひびが入ってしまっています。

他社SiCキャップ劣化2

上の濃いグレー色の物が弊社SiC横渡しビームで、その下が他社のSiCキャップです。

キャップは全体的に白っぽく薄いグレー色になっている事から、SiCが酸化され劣化していることが見て取れます。新品時の元々の強度の違いもあるかもしれませんが、SiCが酸化され劣化する事により機械的強度も確実に落ちますので、やはり耐酸化性能はSiC耐火物にとって最も重要な性能の一つです。

SiCコンバスター

ハイスピードガスバーナー用のSiCコンバスターの紹介です。

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写真の物は再結晶SiC (Re-SiC)製です:全長208mm。

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再結晶SiC (Re-SiC)は最高使用温度が1,600℃と高温条件下でも使用可能です。

反応焼結SiC (Si-SiC)製コンバスターは緻密質で酸化消耗も非常に少なく良いのですが、使用温度が1,350℃を超えると含浸させた金属シリコンが溶け出してきてしまいますので、その場合はこの再結晶SiC製コンバスターが必要になります。

バーナー部は熱電対で測定している炉内の雰囲気温度よりも高温になりますので材質選定には注意が必要です。

水分によるアルミナコーティングの剥がれ

SiC棚板に通常施されているアルミナコーティングは、新品時は有機バインダーで板に軽く引っ付いているだけで、約1,100℃以上に焼成されて初めて板にしっかり焼付くような配合になっております。

ですので1回目の焼成では特にそうですが、焼成時に水分が焼成物と棚板との間にこもってしまうような状態ですと、アルミナコーティングが棚板に焼付く前に水蒸気によってコーティングがふやけて浮き、剥がれてしまう場合があります。

アルミナコーティング水分めくれ2

このSiC棚板は、食器の焼成で食器底部分のハマ(高台)の内側に乾燥しきっていない釉薬の水分が閉じ込められ水蒸気となりコーティングが浮いて剥がれてしまった例です。

アルミナコーティング水分めくれ1

焼成時には製品が十分乾燥しきっているのを確認しないと、このようにコーティングに悪影響を及ぼす場合があり、特にSiC棚板1回目の焼成時には顕著に影響が現れますが、2回目以降の焼成でも、こもった水分によりアルミナコーティングが剥がれる場合はありますので注意が必要です。

反応焼結SiC(Si-SiC)の強度

反応焼結SiC(Si-SiC)ビームは常温曲げ強度・高温曲げ強度共に250Mpaと台車の構造材としては非常に丈夫な耐火物です。

しかしこの反応焼結SiCビームでもハンドリングの時にちょっと硬いものにぶつけたり、低い位置からでも落としてしまうと下の写真の様に簡単に折れてしまいます。2014 6 SiSiCberam 折れ

高強度な耐火物であっても、耐火物はセラミックス製品であり、金属とは違い衝撃に対しては弱いです。2014 6 SiSiCberam 折れUP

ですので、全長が長い割に細いものや、サイズが大きい割に薄すぎる板などは、炉内での使用上は問題ないとしても、納入までや納入後・操業時のハンドリングを考えた時、非常に割れやすい為お勧めできないという場合もございます。

アルミナ・ムライト質耐火物の熱間荷重による収縮

下の写真は使用された、アルミナ約60~70%のアルミナ・ムライト質 L型支柱です。

L型支柱サイズばらつき

元は同じ高さのL型支柱でしたが、荷重のたくさんかかる箇所で多く使われた物と、そうでない物・新し目の物とはこれだけ高さに差が出てしまっています。

アルミナ・ムライト質の白物耐火物は熱間荷重により少しづつ収縮されてゆきます。「高温で荷重がかかると物がつぶれてゆく」という比較的イメージしやすい現象かと思います。

ちなみにSiC耐火物の場合は「最高使用温度まで機械的強度は落ちない」という特性と、「焼成雰囲気中でSiCが酸化されることによってSiO2が生成され少しずつ膨張してゆく」という性質から、逆に使われれば使われるほど膨張し寸法は大きくなります。

SiCプレートの穴加工について

SiC耐火物は非常に硬い材質の為、焼成後の後加工は結構難しく、特に穴加工の場合はダイアモンドのドリルで加工することになりますが、ドリルが摩耗してゆくと開けられる穴の直径がだんだんと小さくなり、特に穴直径の寸法公差が厳しい場合ですと、すぐにドリルを交換しなくてはならなくなり高価なものとなってしまいます。

しかしながら、プレス成型品である酸化物結合SiCの場合、直径φ8mm以上の穴ですと金型から穴を作ることができ、加工無しで穴付きのSiCプレート等ができます。

穴付き酸化物結合SiCプレート

この場合、金型で寸法が決まってきますので、穴の大きさも変わる事無く量産でき、最初に金型代はかかりますが製品単価自体は後加工品よりも安く抑えられます。

ただし金型から作る場合はある程度のまとまった数量が必要となりますのでご相談ください。

支柱をSiC棚板の中心に置くとSiC棚板が割れます

棚板は3本の支柱で支えるのが一番安定し良いとされています。2013Dec支柱組み方1blog

 

一方、焼成製品の重さによってSiC棚板が割れたり曲がったりしないようにと、棚板の真ん中にも支柱を置こうとする方が時折いらっしゃいますが、この棚組方法は非常に危険で逆にSiC棚板の割れを引き起こしてしまう可能性が非常に高いです。2013Dec支柱組み方2blog

 

炉内で温度が下がる過程で、熱伝導率の良い板形状のSiC棚板は端の方から比較的早く温度が下がってゆきつつも、棚板中心部分は冷め難い為、最後まで温度が高い状態にあります。一方、支柱はアルミナ・ムライト質でSiCよりも熱伝導率は10倍悪いとも言われており、且つムク形状の為、支柱の方はなかなか温度が下がりません。2013Dec支柱組み方1裏最終

となると下のイメージ写真の通り、蓄熱された支柱がSiC棚板中心部分に接触していると支柱から棚板中心部分へ熱を与え続ける事となり、その結果、ただでさえ元々温度が高い棚板中心部分が更に熱くなってしまいます。2013Dec支柱組み方2裏最終最終

 

SiC棚板含め耐火物が割れる一番大きな原因は温度差=ヒートショック(熱衝撃)ですので、良かれと思って置いた中心の支柱が、逆にSiC棚板に熱的ショックを与える事となり、結果棚板の割れを引き起こしてしまいます。

耐火物の使用にあったっては、1つの物に関してできるだけ温度差が付かない様な設置方法・使用方法が重要になります。