電子セラミックス焼成用セッター

電子セラミックス焼成用アルミナセッターDKA-86のご紹介です。
アルミナ・ムライトセッターDKA-86
アルミナセッターDKA-86

アルミナセッター自体の かさ比重を低く抑えて高気孔率にすることにより、ワークの脱バインダー性を向上させております。セッター原料は微粒構成の為、加工性に優れ研磨加工によりセッター表面を平滑に仕上げる事ができ、ワークのキズ不良を軽減します。

又、特殊な製造方法により高気孔率でありながら高強度を保ち、均一な品質を達成しており、肉厚の薄い軽量セッターが供給可能です。

DKA-86 : 150x150x2t 両面研磨品
DKA-86 : 150x150x2t 両面研磨品

アルミナセッターDKA-86代表値

  • 常用使用温度 1,400℃
  • 化学成分 / Al2O3=約78%  SiO2=約22%
  • 見掛気孔率 33%
  • 見掛比重 3.3
  • かさ比重 2.2
  • 曲げ強さ   19MPa

耐火物の形状と割れやすさの関係

同じ耐火物でも形状によって割れやすさ/割れにくさには違いがあります。耐火物の割れ(クラック)は、端と中心や表面と内側などに温度差が出来た時に生まれる”膨張・収縮の差=歪”に耐火物が耐えられなくなった時に発生します(詳しくは以前のブログ「SiC棚板が割れる原因とスリット(切込)の目的」をご参照下さい)。

例えば長方形の板の場合と正方形の板の場合、割れやすさには差があります。

長細い形状の板の場合、昇温時の伸び、降温時の縮みといった歪を長手方向の伸び縮みで吸収し、結果比較的割れ難くなります。

形状と割れ1

一方正方形に近い形状の場合、昇温時の伸び、降温時の縮みの歪の逃げ場がなく割れ(クラック)が発生しやすくなります。形状と割れ2

特に降温時に割れが発生しやすいと言われており、この場合、温度が下がって来た端は収縮し始めますが、中心部はまだ温度が高く膨張したままで、その結果縮もうとする端が縮みきれずに端から中心部に向かってクラックが入るという現象です。

アルミナ質支柱がSiC棚板に引っ付く原因は?

以前「SiC棚板の裏側に支柱が引っ付いてしまうので、支柱の耐火温度が足りないのでは?」というご質問を頂きました。前回のブログの通り、アルミナ質支柱の耐火温度は1,500℃です。では支柱がSiC棚板の裏側に引っ付く原因は何かと言うと、支柱の方が原因ではなく、焼成時にSiC棚板の表面に生成されるSiO2(シリカ)が原因です。


SiC棚板裏側の支柱跡
SiC棚板裏側の支柱跡

焼成時にSiC表面が酸化されるとSiO2(シリカ)が生成されますが、SiO2は高温時はネバネバした状態で、常温になるとガラスのように固まります。その為、焼成を重ねるにしたがって棚板と接している支柱は引っ付きやすくなります。この引っ付きを防ぐには支柱の方にアルミナコーティング剤をこまめに塗るのが効果的です。

アルミナ質支柱の耐火温度

アルミナ質支柱
アルミナ質支柱
アルミナ支柱とSiC棚板
アルミナ質L型支柱とSiC棚板

通常使われているアルミナ質支柱は、アルミナ約70%ぐらいで、耐火温度は1,500℃です(製造時に1,500℃以上で焼成しております)。圧縮強度も680kg/cm2 以上あります。

セラミック焼成に使われる支柱はこの手のアルミナ質支柱が一般的です。

I型・L型・サイコロ型 各種ございます。

アルミナ・ムライト質サヤ(匣鉢)の割れと底下がり

下のサヤ(匣鉢)は焼成温度1,350~1,400℃で使用された他社の物です。

他社製アルミナ・ムライト質サヤ(匣鉢)
他社製アルミナ・ムライト質サヤ(匣鉢)

ご覧の通り、割れと底下がりが起きています(底面真ん中の割れは底下がりによって出来た亀裂です)。

割れの原因は熱衝撃に対する耐スポーリング性能が使用条件に追いついていない為です。サヤ(匣鉢)の中いっぱいに小さなアルミナ製品等を入れて焼成すると、中の空間が少ない為温度が下がる時には中の製品はなかなか温度が下がらず、外側のサヤだけが先に温度が下がり、結果温度差でサヤが割れてしまうという事になります。

又、使っていくうちに底が下がってくるのは、サヤ自体の耐火度が足りない為で、焼成時の製品の重量による熱間荷重でサヤの底部分が下がってしまうという事になります。

難しいのは、耐火度を上げようとしてアルミナ%を多くすると価格も上がりますが、耐スポーリング性能が落ちてしまい、逆に耐スポーリング性能を上げる為にコーディライト質等を多く入れると今度は耐火度が下がってしまいます。

この相反する性質を克服し、耐火度と耐スポーリング性能をハイレベルで両立させたのが当社販売のアルミナ・ムライト質サヤ(匣鉢)です。

当社販売アルミナ・ムライト質サヤ(匣鉢)
当社販売アルミナ・ムライト質サヤ(匣鉢)

特殊な低熱膨張率の原料を配合する事により、1,400℃の焼成にも耐えると同時に、熱衝撃にも強い材質になっております。

どの耐火物にも言える事ですが、コストを抑えつつ長く使用するには焼成条件に合った材質の選択が必要不可欠です。現在ご使用のサヤが割れたり、底下がりが早くてお困りの場合は一度当社までご相談下さい。

ムライト質耐火物の品質の差

ムライト(酸化アルミニウム(Al2O3)とケイ素(SiO2)の化合物)を主原料にした耐火物も一般的に良く使われる白物耐火物です。下の写真は他社製ムライト質支柱の写真です。


他社製ムライト質支柱
他社製ムライト質支柱

 約1年使用しただけでこの様に角や表面がボロボロと取れ、一部では欠けも発生してしまっており品質的に問題があると言わざるを得ません。考えられる原因としては

  • プレス成形時のプレス圧が足りない
  • 粗い原料の繋ぎ材となる細かい原料が足りない
  • 製造時の焼成温度が低い

等の事が考えられます。大物になればなるほど成形時のプレス圧が必要ですが均一にしっかり圧をかけるのは難しくなりますし、支柱の高さを一定にするためプレス成形時にはストッパーでプレス後一定の高さになるように調整しますが、そうなるとしっかりプレス圧を均一にかけるのが更に難しくなります。また大物の場合は粗い原料を多く使って骨材にし、変形を抑える必要も出てきますが、同時に原料の繋ぎ材としてコーディライトを多目に入れ割れを防ぐ必要もあり、コーディライトを多く入れると製造時の焼成で高温焼成が出来なくなり圧縮強度や耐火度が落ちます。


他社製ムライト支柱拡大写真
他社製ムライト支柱拡大写真

この様に大物のムライト質耐火物はしっかりした物を作るには色々と難しい要素がありますが、これらを克服した物が下写真の右の当社販売ムライト質耐火物で、左の他社製と比べても違いが判ると思います。


左:他社製ムライト支柱 右:当社ムライト支柱
左:他社製ムライト支柱 右:当社ムライト支柱

当社の物は適切な原料配合・十分なプレス成形圧と高温焼成によってしっかり焼きしまったムライト質支柱で、最高使用温度1,500℃です。

当社ムライト質支柱
当社ムライト質支柱

ムライト質耐火物は形状・大きさ・使用温度・使用条件等によって原料配合が色々と変わりますが、そのノウハウが品質の差になってきます。またやみくもにアルミナ%を高くしてもオーバースペックとなり不必要に価格が高くなってしまいますので、条件にあった適切な配合選択はコスト削減には不可欠です。

耐火物の幅・厚みと強さの関係

前回のブログにてSiC耐火物の曲げ強さについて説明いたしました。では、同じ材質で幅や厚みが違う場合強さはどう変化するのかというのを今回ご説明致します。前回ブログにも出てきましたが、耐火物・セラミックスの3点曲げ強さσb3(Mpa)の公式は σb3=3PL÷(2wt2) となります。

  • P:試験片が破壊したときの最大荷重(N)
  • L:支点間距離(mm)
  • w:試験片の幅(mm)
  • t:試験片の厚さ(mm)

*「JISハンドブック セラミックス2010」より引用。

この方程式をP(試験片が破壊したときの最大荷重)で解くと、P=σb3×2wt2÷3L となります。ここで式を良く見ると、試験片の厚さ “t” が2乗になっています。即ち同じ材質で同じ曲げ強さ”σb3″の耐火物は、厚さが2倍になれば強さは2倍の2乗の4倍になります。因みに幅が2倍になった場合はそのまま強さも2倍となります。

曲げ強さと厚み幅の関係

 

また感覚的にもお解りになるかと思いますが、式の通り支点間距離 “L” が2倍になると、1/2の荷重 “P” で折れる事となり、即ち耐火物の強さも1/2に弱くなります。

SiC耐火物とムライト耐火物の熱伝導率比較

SiC耐火物は各種耐火物の中でも熱伝導率が良く、即ち炉の中でも早く温度が上がってゆきますので焼成におけるエネルギーロスが少ないと言われております。今回はSiC以外に一般的に良く使われているムライト耐火物と温まりやすさを比較する簡単な実験をしてみました。

夏の直射日光の下にほぼ同サイズの2種類の板を並べました。左は酸化物結合SiC板で、右はムライト板(アルミナ約70%)です。尚、SiC板が白いのは表面にコーティングがされている為です。

SiC&Mullite plate
左:SiC板             右:ムライト板

実験スタート時はどちらも34.5℃です。  
Temperature before test
*土岐市は多治見の隣で今年も酷暑でございます。

 そのまま約20分放置した結果、SiC板は48℃、ムライト板は39.5℃となり、SiC板の方は素手で持つには熱いくらいに温度が上がりました。

左:SiC板 48℃            右:ムライト板 39.5℃
左:SiC板 48℃            右:ムライト板 39.5℃

 このようにSiC板の方がムライト板と比べ熱伝導率がかなり良い事が体感的に分かります。

では数値的に各種耐火物がどのくらい熱伝導率が違うのかを比べると

  • Si-SiC(反応焼結SiC)=40W/mK
  • 酸化物結合SiC = 16 W/mK   *今回実験した材質 
  • アルミナ質(アルミナ90%) =2.9W/mK
  • ムライト質(アルミナ70%)=1.9W/mK  *今回実験した材質
  • ムライト・コーディライト質(アルミナ55%)=1.7W/mK

     (1000℃での数値・上記は参考数値です)

というようにムライト・コーディライト質と比べると酸化物結合SiCでも約10倍近く熱伝導率が良いという事になり、それだけSiC耐火物が温まりやすいと言えます。

 セラミックスメーカー様の中には焼成時の省エネを目指して出来るだけSiC系耐火物を使うようにしている所もございます。

各種SiC耐火物のテクニカルデータはこちらをご覧下さい。

支柱はなぜSiC製ではないのか?

「棚板組み用の支柱はなぜSiCではないの?」と、あるメーカー様から質問を頂きました。今回はそんな素朴な質問にお答えします。

棚板がSiCで支柱もSiCにしてしまうと窯の中でくっついてしまいます。SiCとSiCは1,200-1,300度くらいの焼成時には接しているとお互いにくっついてしまうのです。こうなると棚組みを崩す時には棚板と支柱を壊さないといけなくなってしまいます。
また、以前のSiCは特にそうですが、SiCは使っていくうちに徐々に膨張してゆきますので、支柱をSiCにしてしまうと、支柱の高さも徐々に高くなってしまい炉壁上部にぶつかる事になります。

その点、現在の一般的な白いアルミナ系材質の支柱はこのような事はありません(アルミナ系の場合は逆に荷重に対して縮んでゆきますが)。
また、単価的にもSiCの方がいくらか高くなります。ただ、強度的にはSiC製の方が強く、耐火度もSiCの方が若干高く、製品重量のある碍子の焼成等にはSiC製支柱が使われていたりします。尚、同じアルミナ系支柱でもアルミナの%が90%近くまで上がると耐火度はあがりSiCよりも高温に耐えられる特別な支柱もあります。

支柱ブログ

アルミナ系支柱            SiC製支柱

ということで、現在一番一般的に使われている支柱はアルミナ系となっております。