耐火物の昇温割れ

耐火物が割れる原因のほとんどはヒートショックです。物体に熱がかかる際は表面や縁から先に温度が上がり、熱が冷める際は逆に表面や縁から先に温度が下がり、一つの物体で温度差ができる事によって膨張・収縮による歪みが生まれ物理的に割れます。

下の写真はアルミナ耐火物セッターの昇温時のヒートショックによる割れの例です。

縁が先に温度が上がり膨張しますが、中心部はまだ温度が上がらず膨張せずにいる為、縁の膨張に中心部が追従できず中心部からクラックが入り、クラックがそこまでで止まった状態です。

セッター・棚板の上の積載製品が密に配置してあったり、上段セッター・棚板と積載製品との空間が狭い場合など、セッター・棚板中心部に熱がかかりにくい場合にこの昇温割れが起こる事があります。

SiC(炭化ケイ素)原料事情

前回の記事で記載した通り、中国共産党の環境政策を発端とする中国の電力不足の為、大量の電気を必要とするSiC製煉は大きく影響を受けております。

SiC製錬所の変電設備
SiC製錬設備の電力端子

例えば中国甘粛省天祝チベット自治区には18社のSiC製煉所がありますが、地方政府は9月18日に内7社に対し操業停止命令、残りの11社にも使用電力の上限を設け、実際にはSiC製煉には全く足りない電力上限の為、結果現在もこの地区は全製錬所が操業停止中です。

その隣の寧夏回族自治区では操業しているSiC製錬所は有りますが、電気料金が0.4元⇒0.6元/Kwhと電力コストが1.5倍に高騰、原料のコークスもUS$500⇒US$1200/t と2倍以上になっています。

SiC製錬風景
SiCインゴット

その為、SiCインゴット価格の相場は今年9月以前の約2倍のレベルで推移しており、インゴットを粉砕・脱鉄・整粒したSiC原料価格は約1.5倍、そのSiC原料から作られるSiC耐火物の価格も大幅に上がってしまい、残念ながらこの流れは簡単に元には戻らない物と思われます。

 

SiC(炭化ケイ素)インゴット価格の高騰

SiC(炭化ケイ素)はそのほとんどが中国で製造されています。このSiCの製煉はアルミニウムの製煉の次に大量に電力を消費します。

現在中国は石炭火力発電が全体の70%近くを占めますが、中国政府がコロナ禍の経済立て直し優先から、急に環境対策に舵を切った為、火力発電所の発電が大幅に抑制され、中国全体で深刻な電力不足に陥っております。

電力を大量に消費するSiC製煉工場の強制的な操業停止や生産抑制で、中国全体で半分以下の生産量になった結果、SiCインゴット価格がそれまでの約2倍に高騰し、結果SiC耐火物の原料となる粉砕・整粒されたSiC原料もかなり値上がりするという情報です。

尚、SiC(炭化ケイ素)インゴットの詳しい製造工程は下記ご参照ください。

炭化ケイ素(SiC)の製造工程/現地SiC製煉工場レポート1

炭化ケイ素(SiC)の製造工程/現地SiC製煉工場レポート2

炭化ケイ素(SiC)の製造工程/現地SiC製煉工場レポート3

炭化ケイ素(SiC)の製造工程/現地SiC製煉工場レポート4

 

Si-SiC製積み上げ式丸支柱

SiCビーム用のSi-SiC製積み上げ式丸支柱です。ムライト質での同形状丸支柱からのグレードアップ版です。

サイズは大小2種類あり、大=高さ140mm、小=高さ70mm でそれぞれの組み合わせも可能です(下の写真は大2個+小1個で組み合わせの関係で高さは320mmになります)。

ムライト製に比べ、肉薄にできるので軽量になり、材質的な比熱も低く、炉の燃費の改善になるのと同時に、ムライト製では長年の使用やハンドリングで角の欠けが発生したりしますが、Si-SiC製の場合ですとそれは各段におきにくくなります。

Si-SiC製積み上げ式小型支柱

SiCビーム用のSi-SiC製積み上げ式小型支柱です。

写真は縦横40x40mmサイズのSi-SiCビームを支えています。

支柱の1段目は高さ75mm、積み上げた2段目は高さ175mmとなります。安定性の観点からは3個積み上げるくらいまでが良いかと思います。

  • 高さが変えられる
  • 小型サイズなので面積を取らない
  • ムライト製支柱に比べ、軽量で比熱も高い為、炉の燃費に貢献する

というのがこのSi-SiC支柱のポイントです。

低温酸化対策品SiC耐火物

非酸化物であるSiC耐火物にとっては、酸化によるSiCの劣化が耐火物の寿命にかかわる一つの大きな要因です。特に炉内温度約700~1000℃弱は一番酸化がきつい温度帯で低温酸化領域と言われており、例えば1300℃での焼成よりも700~1000℃弱での焼成の方がSiC耐火物にとっては過酷な条件となります。

下のバーナースリーブはこの低温酸化に対して強い特別な配合で作られたSiC耐火物です。

表面にきらっとした茶色い色が析出しており、見た目的にはあまりきれいとは言えないのですが、これが低温酸化対策品SiC耐火物です。

製造の焼成工程中の微妙な雰囲気の差によって茶色かったりそうでなかったりの色の差は生まれますが、性能的には均一で同じです。

尚、これを1200℃以上の高温焼成で使用すると、表面の色がべーパーして移ったり、配合成分の一部が溶け出したりしますのであまりお勧めできません。例えば1200℃以上の使用条件の炉床板では別の耐酸化性SiC耐火物もございます。

アルミナポーラス質の色見栓

アルミナ質ポーラスの色見栓です。
写真の物は、はめ合い部φ49mm(色見穴φ50mm)、全長80mmです。

iromisen

一般的には断熱煉瓦を切削加工したものが多く使われますが、それらに比べ耐久性がありまた出し入れのたびに削れることもありません。
下の写真は断熱煉瓦から切削加工したもので、かなりボロボロになっています。
4課色見栓_現行
つまみ付きなので、奥まった色見穴にも使用できます。
4課色見栓_新

プレス加工後旋盤加工しますので、ご希望の寸法で制作可能です。
(受注生産のため最低ご注文数量の設定がございますので別途お問い合わせ下さい)

SiC棚板のSiC含有%比較

酸化物結合SiC耐火物の性能比較の一つの指標はSiC含有%です。

下は他社販売のSiC棚板です。K company SiC sample一部分を切り取り粉砕し分析にかけたところ、SiC%は88.2% でした。SiC content K company一方、以前弊社のSiCセッターを同じ機関で分析した結果は90.4%でした。SiC content Daikoこの%差の原因は元原料の品質(SiC%)の差である可能性があります。以前のブログ記事「酸化によるSiC%の減少」でもご説明した通り、劣化してゆくとSiC%が減ってゆき、棚板として大体使わなくなるくらいに劣化したSiC棚板のSiC%は85.4%でした。

いかに良質のSiC原料を安定的に使用しているかが高性能/長寿命の最初のポイントです。

 

再結晶SiCの焼成雰囲気と使用可能温度

再結晶SiCの大気雰囲気での最高使用温度は1,650℃ですが、酸素の無い雰囲気焼成ではそれ以上の温度でも使用可能です。

SiC99%の再結晶SiCが1,650℃を超えてくると使えない理由はその温度以上ではSiCと酸素が反応してしまいシリカの泡が生成されてしまうからです。一方、無酸素雰囲気での焼成ですとその反応は起きず、2000℃近くで使われている例もあります。

下の写真は無酸素雰囲気焼成で使用されている、再結晶SiCの外径φ450 x 内径φ405 x 高さ200mm の枠です。ReSiC muffle

肉厚は22.5mmあり1個当たりの重量は16.3kg です(カサ比重=2.7)。再結晶SiCですと肉厚で比較的大きな製品も対応可能です。